2016年05月17日

川の道フットレース 254Kmの部(後半)


スタート地点の小諸市の標高は約650mで、鹿渡館が約200m。そこから約30キロ先の魚沼橋あたりが標高80mなので、微妙ながら下り基調のコースと言えます。
しかし、やはりほとんど走れません。パワー切れならともかく、足裏の痛みで走れないなんて、我ながら情けないことです。もちろん、歩いているランナーは他にもいますが、彼らの多くは、そのうちに再び走り出していきました。その背中を、羨ましい思いで見送る私でした。

[走れない(4日12時34分・約134キロ)]
走れない(4日12時34分・約134キロ).jpg

鹿渡館から4時間ほど歩いてきたところで、ふと足元に目を落としました。そのとき、強い午後の強い日射しでできた両脚の影が、びっこを引いていることに気づきました。自分では意識していませんでしたが、右脚を前に出す動きがわずかに遅れているような、あるいはそれが十分に上がっていないような、不自然な動きになっています。
2月に故障し、ほぼ治りかけていた膝が再び悪化してきたのかと一瞬思いましたが、あえてその影の動きを見ながら修正を試みました。左右の脚の動きを意識して揃えようとしたところ、びっこを引くことはなくなりました。
どうやら、痛めていた右膝を無意識にかばおうとして、脚の動きが乱れていたようです。

跛をひく脚(4日16時4分・約149キロ).jpg

さて、チェックポイントの浅沼橋へ到着したときには、すでに夕闇が迫っていました。この時点で、鹿渡館を再スタートしてから6時間あまり過ぎていましたが、進んだのはわずか29キロ。1時間に5キロ弱の計算です。歩きとしてはまずまずのペースですが、走っていれば少なくとも40キロは進めたはずです。
足の痛みは相変わらずで、悔しいですがこの後も歩き続けるしかないと覚悟しました。


[浅沼橋南詰めチェックポイント(4日18時34分・約162キロ)]
浅沼橋南詰めチェックポイント(4日18時34分・約162キロ).jpg

2度目の夜に入ってからは、後続のランナーに抜かれることが多くなりました。歩きのペースも次第に落ちていたのだと思います。走るランナーのみならず、同じように歩いているランナーにも、次々と抜かれていくへっぽこな私でした。
前夜にくらべ気温もやや低く、深夜には10分程の短い時間でしたが急な雨にも打たれてずぶ濡れになり、いっそう気持ちを削がれることになりました。

[2度目の夜(5日0時39分・約182キロ)]
2度目の夜(5日0時39分・約182キロ).jpg

そして夜中の3時頃、長岡の市街地に入ったとたん、コースはそれまでの暗く殺風景なものから突然、都会的なそれに変わりました。そのとき、「ここは東京だったっけ?」「んっ、大阪だったかも」と一瞬、頭が混乱しました。
頭だけでなく、体の方も疲れはピークです。しばらく休もうと縁石に腰を降ろしたところ、腰の骨が“ジーン”としびれるような感覚がありました。いままで何度も長距離を走りましたが、こんなことは初めてです。
「しびれの原因はたぶん、走りと違って歩きの場合は腰をあまり動かさないためだろう」と、自己流の分析を行いました。そして、「ここはひとつ、意識して腰を動かしながら歩くことにしよう」と、対応方法を決めたというものです。

どうか想像してみてください。まるでフラフープを回すようにグルグルと、あるいは安来節を踊るときのように腰を前後に振りながら、深夜の商店街を歩く神々しくも滑稽なランナーの姿を。
しかし読者よ、決して笑ってはいけませんぞ。だって本人は大真面目なのだから。
それにしても、もしこの光景を目撃した人があったなら、その意味不明で不気味な動きをする不審者の姿に、凍りついたに違いありません。いま思い出せばおかしいですが、関連する筋肉が疲れ切るまでの十数分間は、真剣に腰を振り回していた私なのであります。
実話とはいえ、なんだか馬鹿みたい。この話題はこれくらいにしましょう。

[長岡市街地(5日3時・約192キロ地点)]
長岡市街地(5日3時・約192キロ地点).jpg

いつしか朝になっていましたが、私といえばあい変わらず、とぼとぼと歩いておりました。
それでもそろそろ復活する頃ではないかと思い、ゆっくりと走り出そうと試みました。でもダメです。足の裏の痛みはかなり和らいでいるのですが、左の親指の爪がシューズに当たると、ジンジンと痛むことに気がつきました。
実は今回、膝の故障をカバーするため、インソールを2枚重ねて入れたのですが、これが災いして親指が圧迫され、爪の下に内出血を起こしてしまったようです。作戦が失敗だったことにようやく気づき、インソールを1枚抜きました。しかし、時すでに遅し。
そんな私の脇を、軽快な走りで通り抜けていくランナーがあります。

[追い抜いていくランナー(5日6時57分・約207キロ)]
追い抜いていくランナー(5日6時57分・約207キロ).jpg

歩いているランナーも少なからずいます。
そんな中に、びっこを引きながら歩いているランナーの姿がありました。そのゼッケンの色はイエロー。東京からここまでの約480キロを走ってきたフルの部のランナーです。
「痛そうですね」と話しかけたら、「走って走れないことはないけど、ゴールまではまだ40キロある。いま走ったら、なにが起こるか分からないからね」と、その応えは淡々としたもの。「さすが、達観してるなあ・・・」と、いたく感銘する私でありました。 

[歩くランナー(5日8時43分・約213キロ)]
歩くランナー(5日8時43分・約213キロ).jpg

再び無心の境地に入って歩き続け、昼前に新潟市に入りました。ゴールまでさらに続く長い長い平坦地は、精神的にもきついところです。痛み、疲労、強い日射し、強風、はるか先のゴール・・・。ここは、我慢あるのみです。

夕方になって新潟の市街地に入り、そしてここを抜け、

[新潟市街地(5日17時8分・約245キロ)]
新潟市街地(5日17時8分・約245キロ).jpg

ようやく信濃川河岸に入りました。

[信濃川河岸(5日17時43分・約246キロ)]
信濃川河岸(5日17時43分・約246キロ).jpg

河口までいけば、日本海です。
「もう近い」と思ったのですが、実際は海岸まで、まだ4キロ弱はあります。ここも歩いていたのですが、海岸に近くなった頃、それまで川の東側を照らしていた強烈な日射しが、急に和らいできたことに気づきました。日没が迫っていたのです。「落日が見たい」と、そのとき思いました。

それから5分程は、歩を早めて進みました。しかし、海岸はなかなか見えてきません。「このペースでは間に合わないかもしれない」と、意を決して走り出しました。はじめはゆっくりと、そしてしだいにペースを上げていきます。この時ばかりは、痛みのことはすっかり忘れていました。
走りはじめてから500メートルほどきたところで、登り坂の先にスタッフの姿が見えました。ここをダッシュで駆け上がり、「夕陽はどこで見えますか?」と聞いたらスタッフが、「あちらです」と手で指し示しました。
その先は、だれが呼んだか「川の道岬」。多くのランナーが、そこにたたずんでいました。

[川の道岬(約250キロ)]
川の道岬(約250キロ).jpg

そのときまさに、水平線に夕陽が沈んでいこうとしていました。私は夢中で、カメラのシャッターを切っていました。そしてわずか数分後には、夕陽はその姿を隠します。
それにしても、ここまでの苦しかったランとウォークが、このシーンだけで報われると思うほど、美しい夕陽でした。


[川の道岬の落日(5日18時25分)]
川の道岬の落日(5日18時25分).jpg

この「川の道岬」が、気持ちの上ではゴールでしたが、実際のゴールはさらに4キロ先の「健康ランド」。直前のランで終わってしまった脚を惰性で動かし、なんとかたどり着きました。

それにしてもウルトラマラソンは奥が深い。学ぶべきことは、まだまだたくさんある。ーーー あらためてそう思わせられた大会でした。


(私の記録)
タ イ ム 56時間48分58秒
総 合 順 位 36位/44人(出走数)


CP19鹿渡館(133.0km) 22:42:11 25位
CP21和田邸(178.2km) 35:28:02 24位
ゴ ー ル (253.9km) 56:48:58 36位
平均タイム       0:13:25

(前半)へ戻る → http://t-tono.seesaa.net/article/437689198.html


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ラベル:超ウルトラ
posted by との at 16:12| 鳥取 | Comment(2) | TrackBack(0) | 走る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おつかれさまでした!相変わらず強いですね!!名和マラフェス打ち上げでタップリ報告してください。楽しみにしています。
Posted by いったんもめん at 2016年05月20日 21:48
いえいえ強くないですよ。情けない「走り」ならぬ「歩き」でした。でも、今後のための「分析と対策」はしっかりおこないましたよ。
ところで、いったんもめんさんこそ「さくら道国際ネオチャーラン」に出てらしたんですね。強風でたいへんなことだったとか。日曜日に聞かせてくださいね。
Posted by との at 2016年05月20日 22:40
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