夜間走では、ヘッドライトに照射される範囲の情報しか入らなくなるので、雑念が排除されます。それにより走りに集中できるので、私にとっては快適な時間。しかし同時に、忍び寄ってくる睡魔に襲われることにもなりがちです。
この時もやはりそうで、早々と午後8時を過ぎた頃から頭がぼんやりし、いつのまにかペースダウン。対策をした方がよかろうと交流センターのエイドに立ち寄り、与えられた机に置いていたコーヒーをとります。ただし刺激によって胃腸の調子を乱すのが心配だったので、この時はほんの一口だけにしておきました。
さて、半分の25周を終えた時のタイムは10時間40分で、1周あたり26分のペース。これを倍にすれば21時間半ほどですが、後半は2割ほど落ち込むものとして、順調にいってもゴールタイムは23時間くらいだろうと見込みました。もし3割落ちれば24時間の制限時間を過ぎてしまうので、決して楽観できる展開ではありません。
実際、その時点でのペースは1周回るのに30分以上かかっていました。この後は前半に作ったわずかな貯金を使いながら行くことになりそうです。
空っぽのような頭で進んでいたら、いつの間にか日付が変わっていました。再び強い眠気を感じるようになり、時折足元がふらつくような場面もあってペースも相当落ちています。直前の周回を終えた時はエイドに寄りませんでしたが、やはりコーヒーをとれば良かったと後悔しながら斜面を登っていたその時に、目の前を何かが目にも止まらぬ速さで左から右へ横切りました。
一瞬のうちに右側の草地に入ってしまったので、私が目にしたのはその動物の体の後ろ3分の1くらいと尻尾だけ。胴体は猫のようにも見えましたが、そのサイズは私が今までに見た猫の中で最も大きかったものの1.5倍は優にあり、“ピン”と横に伸びた50センチほどのしっぽの太さは、直径が10センチ以上。そんな尻尾を持つ猫は私のデータベースにはなく、虎に違いないと思いました。なんと、天馬山にはタヌキならぬ虎がいたのです。その時、私は恐怖ではなく驚きに包まれ、しばらく放心状態でありました。
このあと下山するとエイドへ入ってコーヒーを飲みましたが、信じてもらえないことがわかっていたので、一幾さんにはこの話をあえてしませんでした。えっ、「幻覚でも見たんだろう」ですって? いいえ、あれは絶対に虎ですとも。私の脳裏に今もくっきりと焼きついている虎の残像をプリントアウトできる方法がもしあるのなら、それを見た貴方はきっと言葉を失うことでありましょう。
[この写真はイメージであり、虎が写っているわけではありません]
さて、1.7キロの真っ暗なコース上にいるランナーは9人。平均すれば約200mに一人の密度でいる計算なので、前後にライトの明かりがあってもよさそうですが、偏りがあるようでそれが見えない時間が圧倒的に長くありました。それでも時々ランナーを見かけますが、彼らはほぼ必ず私の後方からやってきます。明かりがすぐ後ろまで近づいてくると、鈍足の私はコースの脇に避けると足を止めて道を空け、「お先にどうぞ」とその背中を見送ります。これを何十回繰り返したかわかりません。
強い眠気は相変わらずでペースは上がらず、1周に35分から40分くらいかかるようになっていました。30周とか35周したあたりでも、その時のペースでゴール関門に間に合うかどうか計算しようとしましたが、もともと算数が苦手なところに眠気も加わり、確信のもてる答えがぜんぜん出てきません。とうとう計算することは諦めて、なにも考えずに進むことにしました。
眠気は夜明けとともに解消されることを期待し、「日が昇るまでの辛抱だ」と自分に言い聞かせながら我慢の時を過ごします。
そして午前5時を過ぎて、ようやく日の出。これで体も少し覚醒してきました。
40周をカウントしたのは、午前6時25分。残り10周で残された時間は5時間半ほどです。1周あたり33分で回ってちょうどの時間。その頃の所要時間がほぼそれくらいでしたが、そのペースを維持してもギリギリのゴールとなる計算でした。限りなく赤色に近い黄信号というところでしょう。
ということで、ここからは危機感マックス。本気モードに入ります。そのあと2回続けて1周を30分で回りましたが、登りと下りに分けたタイム計測では、登りが17分で下りに13分かかっていました。しかし、どうもこれ以上タイムを縮めるのは無理そうです。眠気と塩分不足を感じていたので、コーヒーやスポドリをチビリチビリととるために3周に1度くらいの頻度でエイドへ寄りましたが、その滞在時間は1分か2分以内にとどめるようにしました。
このペースで最後まで行けるかどうか不安はありましたが、ここまでくれば気持ちの勝負。幸い大きく崩れることはなく、周回を続けていきます。
コース上に人の姿をまったく見なくなったので、47周をカウントしたところで一幾さんに、「コース上には私以外に何人いますか?」と聞いたところ、「アダチさんが最後の1周を走っています」とのこと。ということでこの後、私は天馬山を独占して残り3周を走らせてもらえることになるようです。その時の気持ちは、寂しさ半分、嬉しさ半分というところでした。
最後の1周となった時、センターの前にはすでにゴールやリタイアしたランナー、それに一幾さんがいました。時間は午前11時18分。アクシデントがなければ、完走は確実でしょう。カウンターを押すと、彼らの見送りを受けながらリスタートします。
ところで、山頂を少し過ぎたところの分岐をコースから外れて左に入ると、200m先に割石があります。それは中ほどから二つに割れた直径6メートルほどもある大きな岩。人気漫画「鬼滅の刃」の主人公が刀で真っ二つにしたというシーンを彷彿とさせるもので、その場所は今や鬼滅ファンの聖地になっているそうです。
[割石(4年前に撮影)]
ちなみに私が天馬山へ初めて来たのは4年前、一幾さんからの情報で知った登山道整備作業へ参加するためでした。その時は割石のすぐそばに階段を設置。終了後は、コースを5周走って帰りました。またその1か月ほど後にも、割石を見るために奥方同伴で登山に来ています。 なにせ4年も前のことなのでよく覚えてはいませんが、割石のところまではかなり急な斜面を下ったように思います。もし11時半までにこの分岐へ来ていたら寄ってみるところでしたが、すでに11時38分。このままゴールへ向かっても、正午の関門時刻までは数分の余裕しかないでしょう。とても残念でしたがこの際、割石との再会は諦めることにします。
こうして最終ランナーの私は、関門時間9分前の午前11時51分にゴール。レースの方は、かろうじて帳尻を合わせました。
さて今回は、たった一夜のオーバーナイトランにもかかわらず、思いのほか厳しい睡魔に苦しめられました。一晩完全徹夜となる100キロあまりの大会は、トレランだけでも『広島湾岸トレイルラン』や『KAMI100』など7回、また二晩ほぼ徹夜で走る100マイルレースも『UTMF』や『UTMB』などを6回完走していたので、正直言って「一晩ならちょろい」と思っていた私ですが、本当に参りました。
『天馬100』と銘打ち、このコースを一人で100周した主催者の一幾さんの真似はとうていできないと思い知りましたが、もし来年以降も今回と同じ『天馬山ハーフ』が開催された場合に、再びエントリーするかどうか大いに迷うところです。その時は、出るべきかやめるべきか、三日三晩寝ないで考えてから決めようと思います(笑)
(私の記録)
ナ ン バ ー −
タ イ ム 23時間51分
順 位 6位/9人(出走数)
完 走 率 66%(6/9人)
★「1/2」へ戻る → http://t-tono.seesaa.net/article/515024299.html
にほんブログ村ランキングに参加しています。
よかったら ポチッとお願いします。
↓
にほんブログ村
ラベル:トレイル
【関連する記事】
- 2026 大山町元旦マラソン
- 今年のランの総括
- DUVウルトラマラソン統計
- 第29回ピクニックラン桜江(お試しランのつもりが失意のウォークに)
- 第14回 世界ジオパークトレイルランin神鍋高原(その2)
- 第14回 世界ジオパークトレイルランin神鍋高原(その1)
- 第13回 姫ボタル・瀞川平トレイルラン(後半)
- 第13回 姫ボタル・瀞川平トレイルラン(前半)
- 東郷池一周記録会
- しまなみサラウンド2025(その4)
- しまなみサラウンド2025(その3)
- しまなみサラウンド2025(その2)
- しまなみサラウンド2025(その1)
- 第46回 鵜の池マラソン大会
- 秋吉台カルストTRAILRUN 2025(後半)
- 秋吉台カルストTRAILRUN 2025(前半)
- 鷲峰山を2人deウォーク&ラン
- 第40回浦富海岸健康マラソン大会
- 天馬山ハーフ2025(1/2)
- ランde観光(都と古墳と竹林と!乙訓周遊)

